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*空へ落ちる(non fiction)*
昨日あたしは人が死ぬ瞬間を体験しました。
一昨日、援交相手から貰った五万円を持て余して、サンシャイン60で買い物をしていた時の事です。
服や鞄や化粧品など、生きて行く事にはあまり必要の無いものばかりを買い、ちょっと疲れて表に出て、広場で煙草を吸っていた時の事です。

背後から突然、バン、という鼓膜が破けそうな音がしました。
あたしは車が衝突事故を起こしたのだと思い、興味本位で音のした方に歩いて行くと、ボンネットのへこんだ白い車が止まっていました。
「飛び降り自殺だ」と誰かが騒いでいました。ビルの屋上から誰かが飛び降りて、その身体がちょうど車の上に落ちたらしいのです。
その周囲の道路には桃色の肉片が散らばっていて、血液や皮膚や、人間の面影を留めるものはほとんど見当たりませんでした。
すぐに警察の車が来て、現場にブルーシートで壁を作りましたが、あたしの足元にも骨付き肉の一部が転がっていました。

帰宅して観た夕方のニュースで、飛び降りた人が女性で、しかもサンシャイン60のてっぺんから落ちた事を知りました。
飛び降りる瞬間、彼女は何を想ったのでしょうか。
あんなに高い所から地上に落ちるまでに、後悔とか恐怖とか、そう云ったものは感じなかったのでしょうか。
空という空間に一歩踏み出すその瞬間、彼女は幸福だったのでしょうか、それとも不幸だったのでしょうか。

あたしはテレビを観つつ、多分着る機会の無い、買ったばかりの緑色のチュニックのタグを切りながら、明日の事を考えました。
明日は五時に、新宿のアルタ前広場で待ち合わせをしています。
そうして、身体を売ってお金を手にし、またガラクタを買う事に費やします。
こんなあたしに、生きている価値だとか理由だとか、そんなものはありません。

あたしだって飛び降りたっていいんです。ただの屑でしかありません。何も社会に貢献していないし、自分自身にも不誠実です。
だけど、何かにしがみついている所があります。生きていても仕方が無いと思うのに、今すぐ死んでしまいたいとは思わないのです。
きっとあんなに高い所から空に歩を預ける勇気などない、ただの意気地無しなのでしょう。

ただ、衝動的に自分を死ぬ間際まで追いつめたくなる時はあります。
売春するという行為も、自分を傷つける一つの手段に過ぎません。お金が欲しいわけではないのです。
汚して汚されて、自分自身が腐敗して行く様を見届けて、そこに安堵を感じるのです。
あたしは狂っているでしょうか?多分狂っているのでしょう。
もう一生、正気には戻れないかもしれない。死さえ永遠の安らぎに感じられる程にもっともっと狂ってしまいたい。
そんな風にいつも思っています。

いっその事、空へと飛んで落下して行くくらいに絶望出来ればいいのに、と思います。
あたしは何かにしがみついている、と云いました。
それはきっと、かすかな希望、今にも消えてしまいそうに霞んで見える小さな炎なのでしょう。
そんなものは要らない、と頭で思っていても、あたしの傷だらけのこの身体は尚、卑しくも生を求めてやまないのです。
空へ落ちた彼女を想うと、そんな自分がただただ醜悪に思えるのです。
[2010/05/27 15:01] | 小説―heavy | コメント(0) |
*雨の日曜日*
ぼんやりとして
ふと現実に戻って
それからまたゆめのなかに引き戻される
点滴の管に繋がれている

あめのにちようび。

ヒールの外側が削れてしまったジョッキーブーツで
みずたまりを踏みながらあなたに会いに行く
わたし以外の誰かに会う事で
わたしが今ちゃんとここにいることを確かめるため

コンクリートの床の上であなたは
黙々と棚を造っていた
作業の手をとめたあなたはわたしを見て
困ったように笑った

今日は雨だからする事が無いよ
こうして何かを造って暇をつぶすだけ
コンクリートの匂いがやたら鼻につくね
今日は何処かへ行っていたの?

今日は病院に行ってきたんだよ
仕事はがんばりたいけど身体がついていかないよ
がんばりたいけど限界なんだよ
ほらねまだ熱が引かない

そう言ってあなたの手に手をのせた

本当だ熱いねとあなたは言って
送って行くよと車の鍵を出した
シートベルトを締めながらわたしは
フロントガラスに流れる雨だれを眺めていた

あなたに会えたけれどわたしは
わたしがここにちゃんといるのかわからない
もしかしたらこの風景もゆめかもしれない
弱気になるのは熱のせいだろう

もうがんばれないけどまだ折れないよ
仕事はちゃんと続けてみせるよ
だってわたしがちゃんとしていないと心配でしょう?
大丈夫、がんばるから見捨てたりしないで

そう呟いたらあなたは無言でわたしの頭をなでた。
[2010/05/26 19:39] | 短詩 | コメント(0) |
*朝の風景(non fiction)*
あんまり早くに目が覚めたので、何もすることが無かった。
彼はベッドですうすう眠っているし、起こしてしまうのは可哀そうだから大きな音は立てられない。
此の頃毎朝の日課にしていた野菜ジュースを作るにも、ミキサーの音で目覚めさせてしまう。
一早く起きていた猫が、私の顔を見て、みゃあと鳴いた。

スウェットの上からパーカーを羽織って、外に出る。
朝の光は優しく降り注いで、私の頬を照らす。
住宅街の細道を縫うように歩いて行くと、左手に大きな寺がある。
門前のヒマラヤ杉の選定を終えたばかりのようで、門扉の前には薄白みがかった緑色の葉をつけた枝が両脇に積んである。
車も通らない場所にある信号を抜けて、コンビニの前を行き過ぎる。
皐も躑躅ももう終わりで、どこかから梔子のような甘い香りが漂ってくる。

久々の、早い朝。
眠る前には、もう明日なんて来ないんじゃないかと思えるのに、朝の光を浴びると、自分が生きている事を身体の内側からも外側からも感じられる。
自分の内面に、無限の世界が広がっているようだ。

自動販売機で缶コーヒーを買って、飲みながらくねくねと曲がった路地を行く。
坂を少し下った所に、地元の神社がある。境内には誰もいない。生い茂った樹齢の長い木々に囲まれた、とても澄んだ場所だ。
手水を使い、灯篭と狛犬を抜けて、本殿の前で鰐口を鳴らし、二礼二拍手一礼を済ませる。
いつも、願い事は、たったひとつ。でもそれは秘密だ。

だんだん明るくなる日の光に照らされて、木々が緑の光を落とす。
社務所の前に置かれているおみくじ箱に百円を入れて、一枚取り出す。結果は末吉。
末でもいいや、吉がつくなら。
今日こうして素敵な朝を満喫できているだけでも十分だ。
境内の休憩所に座って、煙草を吸う。禁煙に失敗したのはこれで三度目だ。
こんなもの、何が良いのだろうと思いながら、ぷかぷか煙を吐き出し、二、三度吸ってもみ消した。
こんなに空気が澄みきった気持ちの良い空間に、煙草は要らない、今は。

部屋への道をゆっくりと歩きながら、私は今日一日を何とか乗り切れますようにと願う。
何か心を砕かれるような出来事に会いませんように、身体を壊すような目に遭いませんように。
マンションの階段を上り、家の鍵を開けると、そこはまだ遮光カーテンに遮られた薄暗い空間だった。
猫が、帰ってきた私にすり寄って、みゃあと鳴いた。
彼は、まだベッドの上で寝息を立てている。
あんなに濃密な時間を過ごしたはずなのに、時計を見るとまだ七時前だった。

今日も、一日が始まる。
[2010/05/19 15:17] | 小説―light | コメント(0) |
*あたたかな手(non fiction)*
この細い指先を包み込んでくれるあたたかな手をずっと待っていた。
死んだ方がマシと思えたあの夜からずっと。

月の綺麗な夜更けに、幼い私の心と身体はぼろぼろにされた。
泣き叫んで抵抗すれば良かったのに、私は黙って貪られた。
私が騒いだら、お母さんが起きてしまう。
酔っぱらって私の上に乗るお父さんを刺し殺してしまうかもしれない。
私さえ我慢すればいつも通りの朝がやってくる。
そう思って全ての痛みに耐えた。

その頃から私は自分自身を傷つけるようになった。
それは十年以上も続いた。
腕を切った。首を切った。色んな場所を、煙草の火で焼いた。
狂わないでいるだけで精一杯で、大学だとか就職だとか、そんな事は考えられなかった。
精神的にぼろぼろになって、二十歳を過ぎた頃、私の身体は食べる物も受け付けなくなった。
朝から晩まで薬とナイフを手放せずに、憔悴しきった私はある日、自制心がきかなくなってお母さんに全てを話した。

お母さんはすぐに私を家から出して、次いで自分も姉を連れて家を出て行った。
その数年後、ひとり家に取り残されたお父さんは酒と風邪薬の過剰摂取で死んだ。

欲しかったのはあたたかな手で、私をどうにかまともな道へと導くように手を引いてくれる存在だった。
運命か偶然か、そのあたたかな手は私に差し延べられた。
私の手を握る大きな手は冷たく荒れているけれど、今までに感じたどの感覚より愛おしい。

今も私の手を引いてくれるあたたかな手を、私は一生離さない。
[2010/05/14 02:38] | 随筆―smoking room | コメント(0) |
*我儘*
永遠に続く絆ってあるのかな。
もしもそれがあったなら、今のあたしはそれを掴んで離さない。誰とでも、何があっても。

あなたにさよならを言ってから十年が経って、あたしは変わったしあなたもきっと変わっただろう。
日に焼けた素肌をくっつけて甘えていたあの頃のあたしには何も無かった。
若かったから、何も無くても許された。
今は、何かを背負っていないと人間失格と後ろ指を指される歳になり、それでも何も財産を持たないあたしは、あの頃より随分脆く臆病になった。

あなたには子どもがいるけれど、あたしにはそれも無い。
あの時あなたがあたしの傍を離れて、連れ子がいる彼女の手を取ったのは、それだけあたしが重荷だったんだろうな。
だけどあたしは謝らない。
あの頃のあたしは精一杯生きてた。自分を生かす為に全てを注いだ。あなたに尽くす余裕なんて無かった。
思いやりなんて欠片も無くて、きっとひどい女の子だったけど、あたしは今も昔も自分が一番大切だから。
あたしはあなたより自分が大切だった。

謝らない代わりに、あなたを責めたりはしない。
あたしたちの部屋に彼女を連れ込んでいた事も、喧嘩別れに持ち込もうとした事も。
あたしはあなたのしたひどい事を全て許すから、あなたももうあたしの事は忘れて欲しい。
どんなに現実がつらくても、一度捨てた愛にすがりつけると思わないで。
今のあたしを昔のあたしと思わないで。

あなたとの絆はとっくに切れてしまって、あたしたちはもう二度と交わる事の無い平行線の人生を行く。
甘えた事は言わないで。楽しかった事も、酷い思いをした事も、思い出は思い出のままにしよう。

今更あなたに会ったって、あたしに出来る事は何も無いから。腕を差し延べる事も出来ない。
あなたが疲れても、安らぎの場所にはなれない。
あなたを嫌いになったわけじゃなくて、憎んでいるわけでもなくて、ただ、あの頃はそれなりに愛してた。

あの頃の全てをガラスで固めて眺める事が、今のあたしが出来る全て。
ガラスで固められた風景のスライドを愛する事しか出来ない。
だからもう会えないよ。会わないよ。
さよならを言ったその時に、あたしとあなたの絆は切れた。夢から醒めたように、そこで全てが終わった。

愛していたよ、あの頃のあたしたちを。
世界が手のひらの中にあった頃のあたしたちを。

電話をくれてありがとう。さようなら。
[2010/05/11 19:51] | 小説―light | コメント(0) |
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*My Blue Heaven*


私の記憶の中から、思い出せる限りの事を『小説・文学』カテゴリに。   私の現在を、『ブログ』カテゴリに。

プロフィール

遊

Author:遊
Name:百瀬 遊(Yu Momose)
Birthday:01/28
Blood type: B
Sex:F

●がタイトルにつく場合ブログ、
*がタイトルにつく場合が小説です。

◆初期小説は、書き下ろしのノンフィクションを載せています。
※カテゴリ別に読んで頂ければ、多少なりわかりやすく表示されると思います。
※表記の多い、自傷、ドラッグ、売春はすでに卒業しています。
ドラッグと売春は犯罪ですので、(今更ですが)やっちゃダメな事です。
自傷は犯罪じゃないみたいですが、周りの人が痛いのであまりお勧めできません。
◆09年8月以降、フィクションを増やしていく予定です。
ノンフィクションの場合は題名に表記します。

※著作権・肖像権の侵害、あるいは転載などは禁止とさせていただきますので、よろしくお願いします。

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