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*朝の風景(non fiction)*
あんまり早くに目が覚めたので、何もすることが無かった。
彼はベッドですうすう眠っているし、起こしてしまうのは可哀そうだから大きな音は立てられない。
此の頃毎朝の日課にしていた野菜ジュースを作るにも、ミキサーの音で目覚めさせてしまう。
一早く起きていた猫が、私の顔を見て、みゃあと鳴いた。

スウェットの上からパーカーを羽織って、外に出る。
朝の光は優しく降り注いで、私の頬を照らす。
住宅街の細道を縫うように歩いて行くと、左手に大きな寺がある。
門前のヒマラヤ杉の選定を終えたばかりのようで、門扉の前には薄白みがかった緑色の葉をつけた枝が両脇に積んである。
車も通らない場所にある信号を抜けて、コンビニの前を行き過ぎる。
皐も躑躅ももう終わりで、どこかから梔子のような甘い香りが漂ってくる。

久々の、早い朝。
眠る前には、もう明日なんて来ないんじゃないかと思えるのに、朝の光を浴びると、自分が生きている事を身体の内側からも外側からも感じられる。
自分の内面に、無限の世界が広がっているようだ。

自動販売機で缶コーヒーを買って、飲みながらくねくねと曲がった路地を行く。
坂を少し下った所に、地元の神社がある。境内には誰もいない。生い茂った樹齢の長い木々に囲まれた、とても澄んだ場所だ。
手水を使い、灯篭と狛犬を抜けて、本殿の前で鰐口を鳴らし、二礼二拍手一礼を済ませる。
いつも、願い事は、たったひとつ。でもそれは秘密だ。

だんだん明るくなる日の光に照らされて、木々が緑の光を落とす。
社務所の前に置かれているおみくじ箱に百円を入れて、一枚取り出す。結果は末吉。
末でもいいや、吉がつくなら。
今日こうして素敵な朝を満喫できているだけでも十分だ。
境内の休憩所に座って、煙草を吸う。禁煙に失敗したのはこれで三度目だ。
こんなもの、何が良いのだろうと思いながら、ぷかぷか煙を吐き出し、二、三度吸ってもみ消した。
こんなに空気が澄みきった気持ちの良い空間に、煙草は要らない、今は。

部屋への道をゆっくりと歩きながら、私は今日一日を何とか乗り切れますようにと願う。
何か心を砕かれるような出来事に会いませんように、身体を壊すような目に遭いませんように。
マンションの階段を上り、家の鍵を開けると、そこはまだ遮光カーテンに遮られた薄暗い空間だった。
猫が、帰ってきた私にすり寄って、みゃあと鳴いた。
彼は、まだベッドの上で寝息を立てている。
あんなに濃密な時間を過ごしたはずなのに、時計を見るとまだ七時前だった。

今日も、一日が始まる。
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[2010/05/19 15:17] | 小説―light | コメント(0) |
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*My Blue Heaven*


私の記憶の中から、思い出せる限りの事を『小説・文学』カテゴリに。   私の現在を、『ブログ』カテゴリに。

プロフィール

遊

Author:遊
Name:百瀬 遊(Yu Momose)
Birthday:01/28
Blood type: B
Sex:F

●がタイトルにつく場合ブログ、
*がタイトルにつく場合が小説です。

◆初期小説は、書き下ろしのノンフィクションを載せています。
※カテゴリ別に読んで頂ければ、多少なりわかりやすく表示されると思います。
※表記の多い、自傷、ドラッグ、売春はすでに卒業しています。
ドラッグと売春は犯罪ですので、(今更ですが)やっちゃダメな事です。
自傷は犯罪じゃないみたいですが、周りの人が痛いのであまりお勧めできません。
◆09年8月以降、フィクションを増やしていく予定です。
ノンフィクションの場合は題名に表記します。

※著作権・肖像権の侵害、あるいは転載などは禁止とさせていただきますので、よろしくお願いします。

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