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*Mobscene 2*
*Mobscene 1*の、続き。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『全く、失礼しちゃう』
一人の女がハイライトに火を点けながらぼやく。
『まぁ、時々気付く客は気付くけどさ、あの野郎、あたしの胸ぎゅうぎゅう揉んだ後、なんだシリコンかよってチェンジしたんだよ』
チェンジじゃあ時給しか入んねぇよ。そう言って女は紫の濃い煙を吐いた。
煙草を挟む指先は真赤のネイルエナメルが剥げかけていて、それが彼女の傷んだエクステンションの巻き毛によく似合っていた。擦れっ枯らしで下品と言う形容詞がぴったりだ。

珍しく待機をしている蘭が突然、
『そぉいや、今日はこれから雪だって。寒いからお客さんも少ないよね』
と言う。こんなにも早い時期に、雪が降るのは珍しい。道理で、冷え込むわけだ。

シリコンパイの彼女の胸は、冬になるとシリコンの部分が凍ったりしないんだろうか。微かな疑問が頭をよぎる。

話を戻すけれど、雪、なんて風情はこの場所には関係無い。愛でる義理もない。
『帰る頃には降ってるかなぁ』
窓の無いハコの中で、蘭は幼い子どものように、真っ白な初雪を心待ちにしている。
『もうすぐアガリか。蘭、今日は幾ら稼いだよ』
『んっと~…お金渡されるまでわかんないけど、こんな日にしちゃ結構指名貰ったから、十五万くらい』
蘭は、十五万くらい、の語尾を上げて言った。語尾を上げるのは彼女のクセだ。
『うざっ。あたしなんて一日待機だったから時給だけだよ。』
シャブ中が頭をぼりぼり掻きながらぼやいた。
『あたしも九時アガリだから、途中まで一緒に帰ろうか』
あたしがそう言うと、蘭はうなづいて星型に鋲が打ってある、ピンクのリストバンドを直した。


雪など見たことも無い、真赤なソファは思った―――この、蘭という女は美人で、おまけにグラマーだ。
こんな島国の片隅で体を売るより、私の祖国でバーレスクをしたら、きっとスターになれるだろう。きっと喝采を浴びるアーティストになるだろう…。
だがしかし、私には帰る術など無い。もし帰ったとしても、私の居場所などどこにも無い。
このまま生地が擦り切れ、使い物にならなくなったら、いずれ故郷からは遠く遠く離れたこの地で、解体されて打ち捨てられ、果てるのであろう。
それはそれで寂しいが、仕方ない。私は所詮、ただの「物」だ。


給料を受け取って外に出ると、見張りのやくざが肩にまばらに雪を乗せて、身を震わせていた。
『大西ッチ~、おつかれ~』
『あ、蘭さん、お疲れ様っス。明日も出勤スか』
『うん。また明日ね~。寒いから風邪ひかないでね~』
蘭は小さな手をひらひらと降って、店を後にした。

蘭の後ろ姿を見送った大西は煙草に火を点けようとするが、風が強くてなかなか点かない。
今日に限って、いつも使っている金のジッポを忘れた。手のひらにあるのは、コンビニで買った黒いプラスチックのラ
イター。
安っぽい、俺には惨めすぎる。そう思いながらも、煙草はやめられない。
やっと点いた火種を見つめながら、大西は部屋に残した妻と腹の子の事を一寸思った。

夜に降り頻る雪は、人をセンチメンタルにさせる。



>11/21/22:39今日は11月なのに、なんと!雪が降ったね!
写真でわかるかな?
寒かったから、お客さんが少なくて、困っちゃった。
みんな、蘭に会いに来て来て♪お願い(>人<)
雪、積もらないといいなぁ。

薄暗い路地に光る街灯の光に、ぼんやりと浮かび上がる雪の写真。

あたしはパソコンの画面を眺めながら、帰り際に蘭の言っていた事を思い出す。
『稼いだお金?半分以上、彼氏が持って行くなぁ…。あ、でも明日ね、お店上がったら新しいテレキャス買いに行くの~。今まで使ってたギター、もう古くなっちゃってペグとかゆるんで駄目なんだよね』
ペパーミントグリーンのやつがいいな。
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[2010/01/03 23:55] | *Mobscene*(※休載中) | コメント(0) |
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*My Blue Heaven*


私の記憶の中から、思い出せる限りの事を『小説・文学』カテゴリに。   私の現在を、『ブログ』カテゴリに。

プロフィール

遊

Author:遊
Name:百瀬 遊(Yu Momose)
Birthday:01/28
Blood type: B
Sex:F

●がタイトルにつく場合ブログ、
*がタイトルにつく場合が小説です。

◆初期小説は、書き下ろしのノンフィクションを載せています。
※カテゴリ別に読んで頂ければ、多少なりわかりやすく表示されると思います。
※表記の多い、自傷、ドラッグ、売春はすでに卒業しています。
ドラッグと売春は犯罪ですので、(今更ですが)やっちゃダメな事です。
自傷は犯罪じゃないみたいですが、周りの人が痛いのであまりお勧めできません。
◆09年8月以降、フィクションを増やしていく予定です。
ノンフィクションの場合は題名に表記します。

※著作権・肖像権の侵害、あるいは転載などは禁止とさせていただきますので、よろしくお願いします。

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