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*すいか*
小学生の頃、皆さんの将来の夢は何ですか、と先生は言った。
サッカー選手だとか看護婦さんだとかいう答えが飛び交う中で、あたしだけ何も言えなかった。
教室でみんなが笑う時、あたしはひとりだけ笑えなかった。

ここでは、大人の定義で言う、「子供にとって有意義な事」を押し付けられている事に気づいていた。

好きな食べ物は何ですか、と先生は言った。
大半の子が、西瓜、と言った。

あたしはあのざらざらとして味気の無い、水っぽくて種ばかりの果物が好きではなかったけれど、自分の好きな食べ物は梅干しですなんて間の抜けた答えを言えるはずも無く、他に何かを思いつくはずも無く、右へ倣えで西瓜と呟いた。

それじゃ、夏休み前のレクリエーションで、西瓜割りをして楽しみましょう。
校庭に連れ出され、グループ分けをされて並ばされ、先頭から順々に、各々小さくて汗ばんだ手のひらに木製のバットを握り目隠しをして、同級生の声援を頼りに、ビニールシートに載せられた西瓜に向かう。

幼い力を振り絞って、渾身の力で地面を叩きつける木製のバット。湧き上がる歓声。笑い声。
隣の列では二人目が早くも目隠し越しに西瓜の位置を捉えて、丸々とした青い西瓜に無垢な、穢れのない、それでもどこか殺意を含んだ一撃を与える。

ぐしゃ、という音がして、ビニールシートに赤い果肉と種が飛び散って、分厚い皮をあっけなく割られた西瓜は無残に潰れた。

食べ物を、粗末にしてはいけませんからね。
そう言って、先生が潰された西瓜の残った部分をさくさくと切り分けて盆に盛って行く。
みんなが切り分けられた西瓜に我先にと手を伸べる中、あたしだけ一人でビニールシートの傍らに佇んでいた。
校庭の砂に染み込んだ果汁は黒い痕を残し、ビニールシートに残された小さな欠片には、蟻や蠅が群がり始めていた。

まるで人間の頭を潰したみたいだね。
あたしがそう言うと、先生は一瞬こわばった表情を浮かべ、その後作り笑いを浮かべながら、そんな事を言っては駄目よ、と、あたしを諭した。

だからね、正直な事は、何一つ言えやしない。
子供だからって、同じ法則で動くと舐めてかかるなよと言いたい。
とても賢い子供だとよく言われるけれど、本当に賢いのは、西瓜割りに興じ、西瓜に群がって喜ぶ子供たちだ。

あたしは賢くなんかない。
本当に賢ければ、もっと上手に立ち回って、大人の喜ぶ子供像を、無意識のうちに演じる事が出来るだろう。
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[2009/11/17 00:25] | 小説―light | コメント(0) |
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私の記憶の中から、思い出せる限りの事を『小説・文学』カテゴリに。   私の現在を、『ブログ』カテゴリに。

プロフィール

遊

Author:遊
Name:百瀬 遊(Yu Momose)
Birthday:01/28
Blood type: B
Sex:F

●がタイトルにつく場合ブログ、
*がタイトルにつく場合が小説です。

◆初期小説は、書き下ろしのノンフィクションを載せています。
※カテゴリ別に読んで頂ければ、多少なりわかりやすく表示されると思います。
※表記の多い、自傷、ドラッグ、売春はすでに卒業しています。
ドラッグと売春は犯罪ですので、(今更ですが)やっちゃダメな事です。
自傷は犯罪じゃないみたいですが、周りの人が痛いのであまりお勧めできません。
◆09年8月以降、フィクションを増やしていく予定です。
ノンフィクションの場合は題名に表記します。

※著作権・肖像権の侵害、あるいは転載などは禁止とさせていただきますので、よろしくお願いします。

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