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●一週間●
(ロシア民謡ヨリ)

♪月曜日は車で眠り~2時間仮眠で働いた~
♪火曜日は渋滞ハマり~狭山に往復3時間~
♪水曜日に市場へ出かけ~捌けた花を買い足した~
♪木曜日に彼岸が明けて~やっと休みを頂いた~
♪金曜日に病院行って~首の骨がズレていた~
♪土曜日にリハビリ行って~日曜日は一日寝てた~

♪友達よ是があたしの~一週間の仕事です~

百瀬 遊
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[2010/03/31 01:18] | ブログ | コメント(0) |
◆あなた◆
私を苦しめたり喜ばせたりする『あなた』と云う存在に、出会った事が果たして幸運だったのか不幸だったのか。

あなたは私を傷つけるつもりなんて無いのだろうけれど、人として関わっている以上は意見が違ったりぶつかったり、些細な事で口論になったり気まずくなったりして結局、私は自ら傷ついてしまう。

あなたは私を喜ばせようとしてくれて、私の見えない・見ていない所にまで細やかに気を遣ってくれるから、私はついそれに甘えて自分の欲望だけ満足させてしまう。
そしてその後になって、自分の鈍感さや図々しさに気付き、それを悔いたりする。

人に振り回されるのも惑わされるのも、もう疲れた。限界だ。
だけど、あなたを大切に想っている以上、あなたを失いたくないと思っている以上、私はこうして自分の中で色々と考えては、あなたの言動に一喜一憂し、喜んだり傷ついたりするのだろう。


昔の無茶のせいで、私の身体はもうぼろぼろになっていて、真夜中に身体に激痛を感じて目を覚ます。
軋む身体を無理矢理立て直して、暗い部屋の中で鞄の中から薬を何種類も取り出し、ぬるい水で飲みこんで溜息を吐く。
さっきまで見ていた悪夢の続きのような現実の中で、私はベッドに凭れかかり目を閉じる。
隣では、仕事で疲れ切ったあなたが静かに寝息を立てている。

心も身体も傷つきすぎて、もう限界だ。
窓の外では相変わらず不夜城の騒音が響いている。
さっきあなたは私を抱いてくれたけれど、それもまた過ぎてしまえば傷にしかならなかった。
こんな傷だらけの身体、ちっとも楽しくないよと云った私に、あなたは優しく綺麗だよと云った。
その時だけは喜びと幸福で一杯だった。
だけど今、私は苦しくて仕方が無い。深い淵に引きずり込まれて行くようだ。
普段はこうして一緒に居てくれる事が当たり前ではない関係にあって、お互い家族もあって、それなのにどこか孤独だからその隙間を埋めようとして互いの体温を求める。
朝が来れば魔法は解けて、あなたはまた私と距離を置くかもしれない。それが怖くて仕方が無い。
怖くて仕方が無いのに、涙が出ない。

起きたの、と不意に訊かれて顔を上げた。
身体が痛くて。でも、大丈夫。いつもの事だから。あたしには痛みを感じない時間なんて無いから。
大丈夫?
薬、飲んだ。だけど何となく、上手く云えないけれど、何かが怖いの。
そう云うと、あなたは布団を持ち上げて、おいで、と私を長い腕で受け止めた。
痛くても、怖い事なんて何もないよ。大丈夫。だからおやすみ。
私の頭をあやすように撫でながらあなたが云うので、私は少しだけ泣いてから眠った。


私を苦しめたり喜ばせたりする『あなた』と云う存在に、出会った事が果たして幸運だったのか不幸だったのか。
人に振り回されるのも惑わされるのも、もう疲れた。限界だ。
だけど、あなたを大切に想っている以上、あなたを失いたくないと思っている以上、私はこうして自分の中で色々と考えては、あなたの言動に一喜一憂し、喜んだり傷ついたりするのだろう。

これは苦しみと喜びの連鎖だ。
だけどこれだけは云える。
あなたがいるから、私は息をしている。
[2010/03/28 03:04] | 随筆―smoking room | コメント(3) |
●続・首イタタ●
お久しぶりです。

お彼岸の仕事中から首が痛くて仕方無く、一昨日病院に行ってきました。
レントゲン撮ったら、首の骨が前後逆に湾曲していてズレてましたw
…痛くないはずが無い。。。
そのせいで、周りの筋肉が凝り固まり、ついでにズレた骨で神経が圧迫されると云ういらんオプション付き!
筋弛緩剤と痛み止めの注射を受け、薬を貰い、しばらく仕事休んでリハビリ通いです。
右腕の状態が特にひどく、こうしてタイピングはできるけれど痺れと痛みで動かせません(涙)。
そんなわけで、休暇を頂戴してもやることが無い。
絵も描けないし手芸全般アウトなのでどう暇を潰せばいいんだか。

・・・仕方無い、小説でも書くかw

百瀬 遊
[2010/03/28 02:19] | ブログ | コメント(0) |
●首、イタタ●
おはようございます。最近毎朝こんな時間に起きてます。
何故って⇒お彼岸で仕事(花屋)が忙しいから^^;
毎日、首を寝違えて目が覚めます。。。
一日に二度(起床直後と帰宅後)、ヨガで筋肉ほぐして骨バキバキさせてるんですが…疲れは残ります。
でも今年は眠れるだけマシかな(苦笑)。去年は眠れないで仕事に行っていたので、心の余裕は持てるかも。

そんな理由で、彼岸明けまで小説の更新は(多分)ありません★
何卒、思し召せ。

百瀬 遊
[2010/03/19 04:21] | ブログ | コメント(0) |
*毒と蜜と*
一生懸命、言葉を勉強致しました。私には其れが必要だったので。
君の事が好きだと錯覚致しました。私には君こそ憧れだったので。
是は毒ではないと判明致しました。何故なら其れを口にしたので。

愛なんて人に向けるべきではないのです。
何故なら私は独りなので、理解して貰おうなどと考えるだけ無駄だったのです。
此の景色は今も昔も変わらないだなんて、只のセンチメンタリズムに過ぎません。
何故なら景色は刻一刻と姿を変えて、朽ちるものは朽ち生まれるものは生まれるからです。
何一つ変わらないものなど、此の世に存在致しません。
そう決めて仕舞うのはヒト故の傲慢さからくるのでしょうか。
いいゑ、違います、其れだけが只一ツの眞実なのです。

一生懸命、周囲を模倣致しました。私には其れが困難だったので。
君の事が嫌いだと確信致しました。私には君こそ理想だったので。
是は蜜ではないと判明致しました。何故なら其れを口にしたので。

夢なんて己に課すべきではないのです。
何故なら私は独りなので、己のためだけに生きる事が可能だと悟ったからです。
今日より若い日は無い等と誤魔化すのは、アイデンティティの欠落者に過ぎません。
何故なら躰は衰えど意は変わらずに、死ぬる時も生きる時も其等は先ず同調しないのです。
完全無双の集合体なんて、此の世に存在致しません。
そう決めて仕舞うのはケモノ故の無知からくるのでしょうか。
いいゑ、違います、其れだけが只一ツの希望なのです。

空腹を満たすためには、毒を喰らう事も厭いません。
何故なら、其れだけが生き延びるための手段だからなのです。
慾望を満たすためには、蜜を舐める事が必要なのです。
何故なら、甘い物には依存性が有る様に思えるからなのです。

総てのものに、終焉を。
たった一ツの解決案を。
どうぞ御赦し遊ばして。

…戯言なのです。私の謳う凡ての事は。
[2010/03/09 06:09] | 随筆―smoking room | コメント(0) |
*モノクロの海(non fiction)*
海なんて地元じゃあって当たり前のものだからめったに来ないなぁ、と彼は云って、煙草に火を点けた。
あたしのうちの近くには海も川もないからね、そう云ってあたしは伸びをした。

―――仕事なぁ、どうしたもんかな、なかなか決められなくて。
―――決められないの?決まらないんじゃなくて。
―――決められないの。もうちょっと自分の夢に賭けるか、安全圏に行くかが決められない。
―――あたしも決められない。自分の進む道なんてわからないよ、まだ。
―――ユウはいいじゃん、モノカキでいれば。
―――駄目。あたし、人間のための人間らしいモノって書けないから。
―――なにそれ。
―――あたしさぁ、人間という種族なんだけど、限りなく獣寄りなのね、世の中に適応しづらいし、人間関係も面倒で厭。世間体とか、おもてなしとかへりくだりとかわかんないの。
―――あ、それなんとなくわかる。ははっ。
―――だからあたしは獣のままでいるしかないんだけど、獣が書いたモノが人間に理解できるとは思えない。
―――難しい事云うなぁ。結局、面白きゃいんじゃね?

海はほんの少し荒れていて、波の音が大きい。空は雲の切れ間に時々光が射す程度。いつもの青は見えない。
昨日の雨で、海岸に打ち上げられたゴミをせっせと拾う人が行き過ぎる。

―――コミューン造りたいね。
―――ああ、それいいな。
―――自給自足して、適当に生きて死ぬの。
―――それって理想だよな。
―――何でこんなに面倒臭い時代に生まれちゃったんだろうね。
―――本当に、何でこんなに面倒臭い時代に生まれちゃったんだかなぁ。
―――無人島で、魚釣って木の実食べて暮らしたい。
―――文明が滅んでも、俺達楽しくやってまーすって感じになりそうだよな。
―――やっぱりあたしたち獣寄りなんだよ。

だからこんなに生きて行くのが難しいの。ヒトの中で、ヒトに協調して生きて行くのが難しいの。
ヒトに協調して、ヒトのふりをしているのがつらくてたまらないから、たまに歯車が狂うの。

―――結局、何のために仕事なんてするんだろ。雇用なんて意味不明。
―――生きるための労働なら楽しくやれるんだけどなぁ。
―――立身出世とか親孝行とか、そんなもの気にしないで孤独に生きて死にたいなぁ。
―――所詮人間一人って言葉、本当の意味をわかっている人間ってどのくらい居るんだろ。
―――さぁ、わかんない。ただ少なくともあたしたちはその意味を知っているような気がする。
[2010/03/09 05:14] | 随筆―smoking room | コメント(0) |
*ラナンキュラス*
朝焼けの空の色は、私の部屋の花瓶に活けられたラナンキュラスと同じ東雲色。

眠れずに夜を明かした顔を鏡に映すと、それはとてもひどい顔をしていた。
目の下には隈。真っ赤に泣き腫らしたウサギのような赤い目。

昨日の夜、突然、君に別れを切り出された。
でも、数ヶ月前からなんとなく、そんな気はしていた。
ちょっとかび臭いお風呂場にほのかに残った香水の匂いや、なかなか帰って来ないメールの事や。
だからって、一年と三ヶ月も付き合っていて、こんなにもあっさり裏切られて捨てられるとは思ってもみなかった。
愛してた。たぶん、私は彼の事をきちんと愛していた。
だから、こんなにも胸が痛くて頭がこんがらがっているんだ。

彼の部屋のドアを閉めて、アパートの立ち並ぶ路地を歩いていたら、急に涙が流れて止まらなくなった。
「別れた方がいいと思うんだ。俺、他に好きな子が出来た」
好きな子が出来た、じゃないよ。もうその子は君の部屋に何度も来て、君と何度も夜を過ごしたんでしょう。
もらった紙袋の中に突っ込んだ私の赤い歯ブラシは、君の青い歯ブラシと一緒にさっきまで洗面所のコップに仲良く並んでいたのに。
洗いざらしのパジャマも、洗顔フォームもヘアスプレーも、お揃いのマグカップも全部、使い古しの紙袋の中。
私はそれをコンビニのゴミ箱に無理やり詰め込んで、振り返らずにまっすぐ駅への坂道を上った。

涙が止まらなくて、しゃくりあげて、息が切れる。
この坂はこんなにきつかったっけ。
夜に帰る時には、いつも彼が手を繋いで隣に居てくれた。
イヤフォンを片方ずつお互いの耳につけて、好きな曲を聴きながら、駅までの道のりを歩いた。
朝に帰る時には、寝起きの君にキスをして、一人でこの坂を上ったけれど、そんなに長い距離には感じなかった。
駅までの道ってこんなに遠かったっけ。

坂の途中で堪え切れなくなって、立ち止まってうずくまった。
ひどい、ひどい気分だ。電柱の陰で、私は胃の中のものを全て吐き出した。口の中が苦い。
もうきっと、誰も信じられないし、誰の事も愛せないんだな。私はくらくらする頭の中で繰り返した。
見上げた空には黄色い満月。いつもなら君と月を見上げながら歩いているはずの道。
辿り着いた駅の改札で、振り返って手を振る事もない。
人のまばらな車内で、座席に腰掛けた。人前に出ても涙が止まらないので、前のめりになって両腕で顔を隠した。
君のために伸ばした髪が、膝を覆った。

やっと辿り着いた自分の部屋で、私はひとつひとつの思い出を大きなゴミ袋に詰めて行った。
君の使っていたスリッパ。二人で写った写真。朝に弱い君のために買った目覚まし時計、緑色のバスタオル、誕生日に買ってもらった大きなくまのぬいぐるみ…
最後に、薬指にはめていた銀の指輪を外し、袋に放り込んで口を縛り、アパートのゴミ捨て場に置いた。
愛してた。愛していたもの、全部捨てた。

部屋に戻ると、そこにはもう君の面影など何も無くて、私は私だけのものを置いた部屋でしばらくぼんやりしてから、冷蔵庫の中からビールを出して飲んだ。
これも、君の好きな銘柄のビールだ…そう思うと、また涙が止まらなくなった。
絶望って、こういう状態の事を言うのだろうか。
時計の針はすでに朝四時を指していた。

突っ伏したテーブルの上には、昨日花屋で買ったばかりのラナンキュラスが柔らかい花弁を丸く広げていた。
君が私の部屋に来る時は、いつも花を飾っているんだよ。君が明日、うちにやってくると思ったから、可愛らしい花を活けたんだよ。
だけど、この花が散ったら、花を飾るのももうやめにしよう。いっそ、この花も折ってちぎって、花瓶と一緒に捨ててしまおうか。
だけど、ほんのりとオレンジがかった薄紅色のラナンキュラスは、まっすぐに茎を伸ばして私の方を向いている。
可愛い花。私がこんなに泣いていても、黙ってその色彩で私を慰める丸い柔らかい花。

愛していた。愛していた。もうなにも、だれも愛せないかもしれない。
そのくらい打ちのめされて、私はやっとの事で息をしている。
花も、無言で水を吸い上げて、蛍光灯の光を頼りに、精一杯に咲いている。

カーテンの隙間から、明るくなってきた空が見えた。
泣くのはもうこれで終わりにしよう。

何もかもなくなったと思っても、それでも私は呼吸をしていて、花瓶に活けられた花を綺麗だと素直に思えるのだから、私はまだ何かを愛せるはずだ。
意地でも何かを愛してみせる。こんな事で立ち止まってたまるか。
鏡の中の、とんでもなくひどい顔をした自分にそう言い聞かせて、深呼吸した。
空が、東雲色に染まって行った。
[2010/03/08 07:21] | 小説―light | コメント(0) |
*暗闇と雨、沈丁花*
日曜の夜、各駅停車の列車に乗って、あたしは帰路につく。
列車の中は空いていて、外は暗闇に冷たい雨。
駅に列車が着き、自動ドアが開くと、屋根の無いホームに出来た漆黒の水溜りに、電灯で照らされた波紋が広がって消えた。
発車の合図の後、ドアが閉まり、列車は軋んだ音を立てながら動き出す。
あたしは暗い夜に降る雨が好きだ。

列車を降りて息を吸い込むと、線路脇に植えられた沈丁花の香りがした。
頭の天辺を擽るような甘い香りが、何かを思い出させようとする。けれど、あたしはそれを思い出せない。

静かに雨は降り注ぎ、暗闇の中に溶けて行く。
昼に降る雨よりも、夜に降る雨の中を歩く方がいい。なぜか安心するからだ。昼間の雨は落ち着かないというか、軽く憂鬱な気持ちにさせられるが、これだけ暗く、寒く、湿った空気の中に居れば、憂鬱さえも身体の一部のように感じ、苦痛には思わない。

あたしの部屋に帰る途中に、あなたの住む部屋がある。
あたしはわざと遠回りして、踏切を二度超えて駅の向こう側を通る。
踏切の音が不協和音を醸して、濡れた遮断機の黄色と黒、赤い警告灯が陰鬱な夜によく映える。
雨に濡れた道路には、白や赤の椿が散らばっていて、萎れた花弁の先が茶色く変色している。
艶やかに咲き誇り、花を散らせる事もなく、首からぽとりと落ちる椿の花は見事だけれど、路上で朽ち果てて行く姿はとても惨めで寂しい。

こんな夜には、あなたに会わない方がいい。
会ったならきっと、どこまでも生きる事に前向きなあなたの前で、あたしは只の道化になってしまう。
暗くて寒い。雨は霙のように冷たく降り注いでいる。あたしは、自分の死について密やかに考える。
自分の死を見つめると、なぜかとても穏やかな気持ちになる。あたしは闇に溶けて無くなるのだ。
死を恐れるのは、残された人の事を想うからであって、あたしがもし一人きりなら、早くこの自分を縛りつける身体から解放されてしまいたい。
あなたに会いたくない理由は只一つ。
明日の事、一ヶ月後の事、ましてや一年後だなんて、そんな未来は想像すらできないあたしは、十年後の未来を見据えたあなたには滑稽に、或いは馬鹿馬鹿しく思えるに違いないからだ。
そんな自分を見せる事で、あなたにまた呆れられるのが怖いのだ。

そして、前を向いて走り続けるあなたに、あたしの自己陶酔か自己完結にも似た理論なんて通用しない。
今だけを見つめて、目の前の積み木を崩さないように精一杯なあたしは、決してあなたに追いつけない。
時々、その一生懸命さが可愛らしいとあなたは云ってくれるけれど、その言葉の真意はきっと、可愛らしく思えても同じフィールドには立てないと云う事なのだろう。
小さな子供が頑張っている姿を微笑ましく感じるように、あたしの事を見ているだけなのだろう。
あたしはいつだって対等でいたいと願っているけれど、それは多分あたしの我儘でしかないのだろう。

もっと雨が激しく降ればいいのに、と思いながら、あたしは住宅街を歩く。
其処此処に沈丁花や梅が咲いていて、霧雨に変わった雨に強く香る。
幼い頃、連れて行かれた何処かの梅林をふと思い出した。白梅の、噎せ返る様な匂いを思い出した。
あの頃のあたしと今のあたしは何も変わってはいない。ほんの少しの高さの梅の幹に登って、降りられなくなって泣いていた写真が今も残っているけれど、その時の気持ちは今も抱いている。
何事にも立ち向かう癖に、いざという時には本能的に逃げてしまう。或いは、泣きじゃくって、差し延べられる手をただ待っている。
そんなあたしを変えようとするのが、あなたなのだ。
深い淵に沈んで凍えているよりも、何処へ続くのか分からないけれど光射す路を歩めとあたしに教えているのがあなたなのだ。
あたしは深い淵に沈んでいたい。冷たい水の底で、世の流れも人との関係も全て知らないままに、或いは無視してひらひらと孤独に泳いでいたい。
それなのに、あなたはそんなあたしに歩けと云う。何も自分を護る術を持たぬままで良いから、とにかく一歩を踏み出せと云う。
光の路は時々茨の道に変わる。あたしは何度も路を歩いては、茨に刺されて血まみれになった足を引きずって暗い淵へと戻った。
これまでの人生、何度も、何度も。
それでもあなたはあたしに歩けと云う。茨の道も泥濘も歯を食い縛り耐えて歩き、その先に何が待っているのかなど知りもしない。あなたさえ、それはわからない。
それならば、あたしは命が尽きるまで暗い淵で漂っていたい。目指すものなど、何も無いのだから。

けれどあなたが背中を押してくれるのなら、あたしは再び歩き出しても良い。
あなたが手を引いてくれるなら、疲れ果てて倒れそうになった時に頭を撫でてくれるなら、どんな路でも進んで見せる。
そう決めたけれど、やはり暗い夜の中を彷徨うと、途端にあたしは自分の居心地の良い場所へと戻りたくなる。
だから、今日は、あなたに会えない。

通りの角を曲がると、また沈丁花の香りがした。
あたしはその時思い出した。初めて嗅いだ沈丁花の香りは、幼い頃母親が挿し木にすると手折って来た一輪の沈丁花の香りだった事を。

そして、その時なぜかあたしは自分が極めて不誠実で臆病で、あなたとは到底対等な立場になどなれない、と直感した。

あたしは記憶を曖昧にしながら漂うように生きている。歩み出せない。
あなたとの距離を縮めるために走る事なんて絶対に出来やしない。
あなたへの想いは強く、自分が壊れそうなほど慕っても、あたしは変われない。傍に居ることはできない。

こうして暗い闇に降り注ぐ雨の中、白いため息をついたあたしの意識は、暗い淵を漂っている。
[2010/03/07 14:25] | 小説―light | コメント(0) |
*あなたは生きている(non fiction)*
「宮下さん、宮下さん」…そう耳元で呼びかけながら、医師はみっちゃんの胸をとんとんと叩いた。

植物状態になったみっちゃんは、何の反応も示さずに管につながれて、病院のベッドに横たわっている。
人工呼吸器を付けた喉からはシュウシュウと音がする。その音が、あたしの胸を締め付ける。

「脳内出血なんだって。まだ若いのに…危篤だって云うから、ユウちゃん会いに行ったら?」
御柱の年、数年ぶりに故郷の友人から掛かってきた電話に、あたしは戸惑った。
みっちゃんとは、赤ん坊の頃からの付き合いだった。小学校に上がる時は、お揃いのワンピースを着て手を繋いで、まだ舗装されていない田舎道を歩いた。
放課後は学校の裏山で、春には紅梅の香りに包まれ、夏には草いきれに汗ばむ肌を寄せ、秋には椿の実を拾い、冬にはスキー板を持って遊んだ。

高校を卒業し、あたしが地元を出る前夜、まだ寒さの残る中、あたしたちは小学校の裏山で諏訪湖の周りに広がる光の群れを見降ろしながら色々な話をした。
その時に、みっちゃんがぽつりと言った言葉を、あたしは一生忘れない。
「ねぇ、ユウちゃん。遠い遠い将来、あたしが植物状態になったり危篤になったりしても、決してお見舞いには来ないでね。」

ユウちゃん。あたしの事を忘れないで。離れてもずっと友達でいよう。おばあちゃんになっても、仲良しでいよう。
だけど、一番最期だけはユウちゃんに見て欲しくないの。

「あたしも。もし、あたしがそう云う状態になったら、みっちゃんもお見舞に来ないって約束して。」
あたしはそう云って、みっちゃんの小さな手のひらを握った。

みっちゃんは真っ白なベッドの上で、目を堅く閉じたまま動かない。
あたしは本当に此処に来てよかったのだろうか。一目みっちゃんに会いたいと願ったあたしのエゴで、あたしはみっちゃんとの約束を破った。
外は、吹雪が吹き荒れていた。病院の窓ガラスを打つ大粒の雪のひとつひとつがあたしを責めているようで、みっちゃんがあたしを責めているようでなんだかとてもやるせなかった。
今年は御神渡りもまだ出ていないそうだ。

医者の問いかけにも、何の反応も示さないみっちゃん。
浅葱色の患者用の衣類を纏ったその下は胃バイパスにカテーテル、全身を管だらけにされて永らえて、それも今日明日の命だと言う。
あたしは漠然と思った。もう、みっちゃんは此処には居ない。
こうやって、身体だけを生かして、それもほんのわずかな期間の命の為に。
いつもあたしの横で笑っていた、おしゃべりで活発なみっちゃんは此処には居ない。
此処に居るのは、みっちゃんじゃない。動きもせず、勿論話す事もない。青白い顔をして、まるで知らない人のようだ。

外の吹雪はますますひどくなった。
あたしはベッドの脇に投げ出されているみっちゃんの、相変わらず小さな手に触れた。
その手はむくんでいて、冷たく、まるでロウで出来た人形のようだった。
切なくなって、あたしはみっちゃんの手を両手で握りしめ、動かないみっちゃんの耳元で呟いた。

「みっちゃん。みっちゃん。あたしだよ。ユウだよ。」
ごめんね、約束を破って会いに来たりして。

何度か呼びかけていると、みっちゃんがとても弱い力であたしの手を握り返してくれたのを感じた。
ほんの一瞬の出来事だったけれど、みっちゃんは確かにあたしの手を握り返してくれた。
彼女は何を伝えたかったのだろう。
来なくてよかったのに、か、来てくれて有難う、か。
どっちでもいい。ただ、植物状態で医者の問いかけにも反応しない彼女が見せてくれた奇跡が、あたしの胸を打った。
みっちゃんは此処に居たのだ。誰も気づかないけれど、みっちゃんの心は確かに此処にあったのだ。

日が落ちて、外は真っ暗になった。東京までの最終電車の出発時刻が迫る。
「もうすぐ帰らなきゃ。明日も仕事なんだ。みっちゃん、頑張って。生きて。」
あたしはそう云って、病室を後にした。

帰り道もずっと、みっちゃんの冷たい手があたしの手を握り返してくれた時の感覚を噛みしめながら、あたしは東京に戻った。

一時は危篤状態で、この二、三日が峠でしょう、と云われていたにもかかわらず、みっちゃんはまだ生きている。
あたしの手を握り返してくれた時のような奇跡が重なるように、あたしは今も願ってやまない。

みっちゃん、あなたは生きている。
[2010/03/07 04:33] | 小説―light | コメント(0) |
●言い訳三昧●
皆様今晩和(お早うございます?)、百瀬です。

この度、『*Mobscene*』を休載する事に致しました。
ネタ詰まりでも時間が無いわけでもなく、草稿はラストまで上がっているのですが、なんだかこういう物語が自分には合っていないような気がして、中盤からちょっとした葛藤がありました。
ですので、思い切って無期限で休載する事に致しました。
楽しみにして下さっていた皆様、申し訳ありません。
今しばらくは、毛色の違った物語/ブログに専念させていただきたく存じます。

さて。
今、私はモノカキの端くれとして少し悩んでいます。
それは、私が今まできちんとした物語を描いていないからです。
これほどまでに短編を上げても、自分の納得のいくものは数本にしか満たず、最初から「このテーマで、こう云った展開で、ラストはこう締めくくろう」と計画を立てて運んだ事がありません。
それはモノカキとしては失格だと思うし、これからは少しずつ階段を上がるように、『物語』というものを造っていければいいなぁと思っています。
…と、答が出ていると云うのに、何をぐだぐだ悩んでいるかと云うと、慣れない事を始める自分に戸惑っているのです。
そして、自分には才能が無いのではないかと云うとても大きな不安を抱えています。
ただ、モノカキとして成功を収めたいわけではなく、自分の納得のいくものを書き綴る事が出来たらどんなに幸せだろう、それが出来ない頭の悪い自分は何て間抜けなんだろう、と思う日々です。

それでも、これからも描き続けます。皆様今後ともよろしくお願いします。

百瀬 遊
[2010/03/07 04:00] | ブログ | コメント(2) |
*月光*
眠れなくて窓の外を眺めたけれど、空は分厚い雲に覆われて、下弦の月は見えなかった。
昨日も今日も明日にもする事やしなくちゃならない事は山積みで、それさえ手に余るというのに眠れないなんて、何て残酷なんだろう。

心の中は嵐が吹き荒れている状態で、けれどそれは決してネガティヴな感情ではなく、一種の興奮に似た―――明日の事や近い未来に思いを馳せて、目が冴えてしまうような状態だ。
小さな子供が運動会の前日に眠れなくなる様な感覚に似ている。

心の中の嵐を避けるように在るのは、白砂で出来た小高い丘に囲まれた小さな湖だ。
空は墨を流したように暗く濁っていて、上空を風が吹き荒れる中、そのエメラルドグリーンの小さな湖だけが凪いでいる。
「わたし」は湖に小舟を浮かべて、ずっとずっと長い間、いつか吹く風が小舟を岸辺まで戻してくれるのだと信じていた。
岸に辿り着いた時、誰かがそっと手を差し伸べてくれるのだと信じていた。
そればかりを期待して、もうどれだけの歳月が流れただろうか。

太陽の光も射さず、草木のひとつも見当たらない荒地の中の湖を漂いながら、「わたし」は一度も眠りに落ちる事は無かった。
何かを食するわけでもなく、布を纏う事もせず、単体で小舟に揺られながら、「わたし」はいつの日か誰か心の通じ合えるものに出会える事を信じて疑わなかった。それが人間でも、動物でも、魚でも。
けれど、なにものにも会えなかった。

櫂も舵もついていない小舟に揺られながら、「わたし」はほんの数回、黒雲の隙間に月の光を見た。
それはとても穏やかで神々しくて、「わたし」のやせ細った白い体をすり抜けるように光を投げかけた。
[2010/03/06 05:00] | 随筆―smoking room | コメント(0) |
*何気ない日々(non fiction)*
この子は、一体何が楽しくて、学校が終わるとまっすぐ私の家のチャイムを鳴らしに来るのだろう。
私の家にはゲーム機もないし、特に楽しく遊べる道具もない。

納期が迫ったイラストに着彩しながら、私は暁子を見る。
クッションをお腹に抱えてテレビを見ながら、ひとりでテレビにツッコミを入れたりしている彼女は少なくとも、退屈ではなさそうだ。何でコイツこんな事できねーんだよ、などと悪態をつきながらも真剣にテレビに見入っている。
『ごめんね、もう少しで終わるから、少し静かにしていてくれる?それに、言葉使い汚いよ。直しなさい』
『はぁい。ごめんなさい。でも時々わたしだってギャルになりたい時があるの!』
『~じゃねぇよ、とか、人の事をアンタとかオマエとか云うのは良くないの。今から直しておかないと、将来損するのは暁子だからね』

暁子がウチに来るようになってから一ヶ月が経つが、私はそれをストレスに感じた事は無い。
時々、帰りたがらない彼女の我儘に辟易したり、今日のように仕事中でもお構いなしにやってきて、当然のようにテレビをつける多少の図々しさに少し苛立ちを覚えたりもするが、それでも「もうウチに来るのやめにしよう」とは言わない。
夫は暁子が家にやってくるのを少し、というか相当嫌がっていて、あの子はちょっと図々しいとか、自分の家庭環境が悪いからと云ってウチを逃げ場にしないで欲しい、と云う。
だから、暁子がウチに来られるのは、夫が仕事に出ている日だけだ。

暁子の家庭は相当複雑で、母親は上海人で在日三十年近くになるのに、日本語を全く話さない。
東京駅近くで皿洗いのパートをしているそうだが、その収入ではとても家族を養っていけないので、一番上の二十四の娘が風俗の仕事をして家計を支えている。
家には「おじさん」という人もいるらしいが、血縁関係は不明だ。暁子の母親とその「おじさん」は休日になると必ずパチンコ屋に入り浸っている。
以前、暁子がテレビのCMを見ながら無邪気に、ウチは消費者金融から借金をしていて電話もかかってくるなんて事を話していた。
彼女は三人姉妹で、両親は離婚している。一番下の妹は小学校四年生だが、数年前に引き取られた父方の福島から東京に引っ越してきて、以来、仕事とギャンブルでほぼ毎日不在の保護者に代わって暁子が面倒を見ている。
その妹も、素直で謙虚な子ならばまだしも、とても傲慢で強欲、暁子の財布から小銭を盗むのは日常茶飯事だし、暁子が家に居れば丸で奴隷のように彼女を顎で使う。

『ユウさんの家に居る時が一番落ち着く。だから、帰りたくない』
『駄目だよ。今日も六時までってお母さんに云われたんでしょ。あんまりかまってやれなくてごめんね。』
私は書き上げたイラストをドライヤーで乾かして、細部をチェックしながら云う。
『あ、そうだ。明日の運勢、占ってから行こう。タロットカード借りて良い?』
『だ~め。昨日もそう云って七時までいたでしょ。暁子がちゃんと帰らないと、門限を守っていない事がばれた時にお母さんたちに怒られるのは私なんだよ』
『だって~…すぐ近くだし、走って帰るから』
『ほら、わがまま云わないの。明日は仕事ないから、また明日遊ぼうね』

少し泣きそうな顔で、恨めしげに上目づかいで私の顔を見る暁子の頭をなでて、玄関先まで送りに出る。
彼女は名残惜しそうに、明日ね、バイバイ、と云って帰って行く。
私は、気を付けて帰るんだよ、と云い、ドアを閉めて鍵をかける。
暁子がいなくなった部屋の空気は安堵感と虚無を孕んでいる。
[2010/03/03 22:53] | 暁子と過ごす日々 | コメント(2) |
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*My Blue Heaven*


私の記憶の中から、思い出せる限りの事を『小説・文学』カテゴリに。   私の現在を、『ブログ』カテゴリに。

プロフィール

遊

Author:遊
Name:百瀬 遊(Yu Momose)
Birthday:01/28
Blood type: B
Sex:F

●がタイトルにつく場合ブログ、
*がタイトルにつく場合が小説です。

◆初期小説は、書き下ろしのノンフィクションを載せています。
※カテゴリ別に読んで頂ければ、多少なりわかりやすく表示されると思います。
※表記の多い、自傷、ドラッグ、売春はすでに卒業しています。
ドラッグと売春は犯罪ですので、(今更ですが)やっちゃダメな事です。
自傷は犯罪じゃないみたいですが、周りの人が痛いのであまりお勧めできません。
◆09年8月以降、フィクションを増やしていく予定です。
ノンフィクションの場合は題名に表記します。

※著作権・肖像権の侵害、あるいは転載などは禁止とさせていただきますので、よろしくお願いします。

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