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*世界の終わり*
 空は、不気味な色をしていた。東の空には分厚く灰色の雲が立ち込めているのに、西の空からは夕日が赤々と照っている。
 東の空の雲は赤く染められて、そのせいか、景色まで赤く染まって見えた。
 ―――丸で、世界の終りみたいだ。
 あたしは真っ赤な街の中を歩きながら想う。ギプスを嵌められた右腕にちくりとした痛みが走る。

 この侭、世界が終ったっていいのにな。そうすれば、苦しい事も切ない事もみんな一緒に終わってくれるのに。
 あたしは手首に嵌められたギプスを眺めながら、彼がこの事を知ったら、きっと別れ話になるだろうな、と考えた。
 なにしろ、三十針も縫ったのだ。今までの浅い傷とはわけが違う。
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[2009/04/29 00:29] | 小説―ultra heavy | コメント(6) |
*さよならの日*
※この物語は、「*父の失踪*」、「*青い湖*」の後日談になります。家族の離散を描いた物語です。

 引っ越しの準備が終わらない、と母が電話で泣きついてきたのは八月初めの事だった。
 ついに、家族が終わる時がやってくるのだ。母と姉は、諏訪よりももっと田舎にある山村の古民家に移り住む。家の代金は、父が出した。
 父は自分が定年退職したら、この家を売って、自分も同じ古民家に暮らせるなどと子供じみた夢を見ていた。
 もっとも母は母で、手切れ金代わりよ、と嘯いていたけれど、まんざら虚勢を張っているようではなかった。

 あたしは四万温泉で薬を抜いた後、東京へ戻り、恋人と暮らし始めて七ヵ月になる。
 情緒もだいぶ安定してきて、リストカットの回数も激減した。ただ、タトゥの数は増えて行ったけれど。

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[2009/04/24 21:19] | 小説―ultra heavy | コメント(0) |
*青い湖*
※「*父の失踪*」の続編です。薬物中毒から少し立ち直るまでの湯治の日々物語。


 此処には、温泉と雪景色以外の何も無い。
 ひなびた旅館で出される食事は不味くて、冷めていて、刑務所で出される食事ってこんな感じなのかな、とあたしは思った。
 本当は食べたくなかったけれど、あたしは食べた。生きるために。薬物依存から早く抜け出す為に。

 四万温泉郷の一番奥にある旅館に客はまばらだった。交通の便も悪く、車でしか来られないような場所だ。だからこそ、秘湯を好む人々はもっと下の方にある温泉街の老舗旅館に湯治に来たりしていた。

 
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[2009/04/24 11:39] | 小説―ultra heavy | コメント(6) |
*父の失踪*
※本当にイタイ話なので、ごめんなさい、自己責任で(?)読んで下さい。

 『探さないでください』
 母の携帯電話に送られてきた、たった一行のメール。添付されていたのは、青木ヶ原と思しき樹海の写真。
 そんなメールが何度も何度も母に送られてきて、母はすっかり携帯電話恐怖症になってしまった。

 父が車ごと失踪してしまってから、一体何日経ったのだろう。
 処方薬の、強烈な精神安定剤でべろんべろんになってしまったあたしには時間の感覚が無い。
 ―――いっそあの人がこの世からいなくなってしまったらどんなに楽だろう。
 でも、あたしにはわかっていた。父には自殺なんてする度胸は無いと。

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[2009/04/23 19:34] | 小説―ultra heavy | コメント(2) |
*ファンタジー*
 眠れない夜にはいつも、頭の中に思いつく限りの幸せなファンタジーを描く。
 現実にあった全ての厭な事を頭の中から押し出して、主人公は誰も死なない、悪役は制裁を受ける、そんな型通りの物語で頭の中をいっぱいにして。
 シンデレラの継母と異母姉妹は熱した鉄の靴を履かされて、踊るようにして死んでいったし、シンデレラは王子様といつまでも幸せに暮らしました。
 いつまでも、幸せに。その背中合わせに凄惨な死がある事は、その一言で打ち消されてしまう。

 ある日、あたしの頭上からなにか得体の知れない物が落ちてきた。
 それは、生垣を超えた大通りの車の上に落ちてつぶれて飛び散った。
 鼓膜が破れそうなほど、ひどい音がした。
 飛び散ったものをよくよく見ると、血にまみれた肉片だった。
 サンシャイン60の屋上から、人が飛び降りたのだ。

 あたしは体を売った金で買い物し、少し散歩して帰る途中だった。落下物に運悪く当たった銀色の車のバンパーはひしゃげて見る影もなかった。
 目の前に広がる光景がにわかには信じられずに、あたしはそのまま何事も無かったかのように現場を立ち去った。そして、池袋駅で電車に乗った時、思わず自分の手首に親指を充て、脈を確かめた。
 あたしは生きている。

 ある日、キャバクラで接客中に店の女の子たちの携帯が次々に鳴り始めた。
 『え?火事?ううん、あたしは大丈夫。ここは何ともないから大丈夫。』皆がそう答える。
 明け方、店泊して店を出ると、表は消防車に囲まれていた。
 何体もの遺体が銀色のシートに包まれ、担架で運び出されて行った。
 コンビニでカメラを買い、その様子にフラッシュをたく野次馬たち。
 歌舞伎町一丁目の、風俗ビルでの放火だった。

 帰り際、山手線に揺られながらあたしは自分の髪や衣類に焦げ臭いにおいが付いている事を感じる。
 深夜に起こった火災は消しとめられていたけれど、現場に燻る煙はたとえようもなく嫌なにおいがした。
 あたしは新大久保で行ったん電車を降り、駅のトイレで少しだけ吐いた。昨夜の酒が残っていたせいもあるのだろう。咳きこみながら、呼吸を整える。
 あたしは生きている。

 いつまでも、幸せに暮らせるはずなんて無い。苦労も苦痛も幸せになるための布石だなんて、そんな絵空事など信じない。
 それでもあたしは生きている。
 全く知らない人の死と、身近な人の死を通り抜けて、罪を犯し、それでも出口の見えないトンネルを進みながら。


 今日は別段変った事も無かった。
 ふらふらと出歩いて、立ち寄った店で色々な物を万引きして時間を潰した。
 スリルが楽しいわけじゃないし、特に欲しいものでもなかった。金だってきちんと持っている。
 それでも、こんなちっぽけな雑貨に財布の紐を緩めるのが面倒臭くて、作り笑いで近寄ってくる店員がうざったくて、あたしは店頭に並んだ物を盗む。
 こういう時、あたしは自分が生きている実感を得られない。
 体を切り苛んでいた方がまだまし、タトゥを入れている時の方がまだまし。

 そうして眠れない夜が悪い方向に転ぶと、あたしの汚い妄想がループする。
 それは、幸せなファンタジーを想い描く事より容易で、すぐに頭の中はまだらの妄想に支配される。
 汚い妄想に終わりはない。あたしは頭の中で殺したいものを殺し、汚したい物を汚す。
  いつまでも、絶え間なく。その背中合わせに見過ごしがちな幸せのかけらがある事など踏み躙ってしまう。

 あたしは生きている?

 幾つもの死を見て来た。
 数えきれないほどの傷を作ってきた。
 償いきれないほどの罪を犯してきた。
 
 赤く焼かれた鉄の靴を履かされて踊るのは自分。そんな事はとっくに知っている。
 だから、隣で眠るあなたの穏やかな寝息さえも、次の瞬間には断末魔の悲鳴に変わるのではないか、とあらぬ妄想をしてしまう。
 そんな時あたしは自分の頬を軽く叩く。左頬にプラチナの冷たさを感じながら。
 そしてあたしはあなたの手を握ってみる。あなたは生きている。
 幸せは、続くのだろうか。次の瞬間に死が舞い降りて来ないだろうか。出口の見えないトンネルを進みながら、あたしは思う。
 人は所詮、孤独なのだ。いつまでも、一人で戦わなければならない。疲れ果てても立ち止まる事さえ許されない。立ち止まれば、そこから先の道はふさがれる。
 お伽噺のように、永遠に時が止まることなどあり得ない。

 だから、あたしは生きている。苦しむ為に。
 あたしは生きている。一瞬で通り過ぎる風に似た幸せを感じるために。
 たとえ全てが、幻想だとしても。
[2009/04/15 05:06] | 小説―ultra heavy |
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*My Blue Heaven*


私の記憶の中から、思い出せる限りの事を『小説・文学』カテゴリに。   私の現在を、『ブログ』カテゴリに。

プロフィール

遊

Author:遊
Name:百瀬 遊(Yu Momose)
Birthday:01/28
Blood type: B
Sex:F

●がタイトルにつく場合ブログ、
*がタイトルにつく場合が小説です。

◆初期小説は、書き下ろしのノンフィクションを載せています。
※カテゴリ別に読んで頂ければ、多少なりわかりやすく表示されると思います。
※表記の多い、自傷、ドラッグ、売春はすでに卒業しています。
ドラッグと売春は犯罪ですので、(今更ですが)やっちゃダメな事です。
自傷は犯罪じゃないみたいですが、周りの人が痛いのであまりお勧めできません。
◆09年8月以降、フィクションを増やしていく予定です。
ノンフィクションの場合は題名に表記します。

※著作権・肖像権の侵害、あるいは転載などは禁止とさせていただきますので、よろしくお願いします。

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